最終更新日:2016年11月12日
ANA SKYコイン制度の登場によって、通常は数十万円のコストがかかっていたSFC修行は、陸マイラーにとっては無料で行えるようになったと言っても過言ではありません。ではなぜ、わざわざ高いお金を払ってまでANA株主優待券を使う必要があるのか? 今回は、SFC修行における、プレミアムクラスと株主優待券のメリットを解説します。
そもそもANA SFCっていったい何? という方は関連記事を読んでみてください。一生、ANAの上級会員資格を維持できるカードのことです。
PP単価とは何か
SFC修行は、単純に一番安い運賃で行えばいいというものでもありません。運賃が安いと、その分もらえるプレミアムポイント(PP)が少なくなるからです。修行達成に必要な5万プレミアムポイントに到達するには、搭乗クラスや運賃種別によって、「1プレミアムポイント取得に何円かかるのか」を計算しなくてはいけません。これを「PP単価」と言います。
運賃÷もらえるPP=PP単価
PP単価×50,000≒SFC修行にかかる総コスト
PP単価を抑えることができれば、総コストも安く済むということですね。
各運賃のPP単価を調べる
SFC修行で人気がある「羽田ー那覇」線の運賃とプレミアムポイントの関係を見て、PP単価を計算してみましょう。下の写真は2017年1月26日の運賃です。
上がプレミアムクラス、下が普通席。赤く書き込んである数字は「利用運賃」の区分です。数字が小さいほど、プレミアムポイントの積算率が大きくなります。つまり、運賃1の「プレミアム運賃」が最も多くプレミアムポイントをもらえるということです。下の写真は、運賃種別ごとのプレミアムポイント積算率と搭乗ポイントの表です。
プライベートでよく使われている「旅割」は積算率が75%で、搭乗ポイントはナシ。航空券価格が安い分、もらえるプレミアムポイントが少ないということですね。この情報を元に、ANAのサイトに用意されているプレミアムポイントシミューレータを使って、プレミアムポイント(=PP)がいくつになるか調べて、主要な種別を表にしました。運賃が高い順に並んでいます。
運賃種別 | 運賃 | PP | PP単価 | 総コスト | 搭乗 |
---|---|---|---|---|---|
プレミアム運賃 | 55,090円 | 3,352 | 16.43 | 826,350円 | 15回 |
プレミアム特割 | 47,890円 | 2,860 | 16.74 | 862,020円 | 18回 |
特割3 | 35,890円 | 1,876 | 19.13 | 969,030円 | 27回 |
プレミアム株主優待 | 30,190円 | 2,860 | 10.55 | 543,420円 | 18回 |
プレミアム旅割28 | 25,790円 | 2,860 | 9.01 | 464,220円 | 18回 |
旅割75 | 12,490円 | 1,476 | 8.46 | 424,660円 | 34回 |
運賃種別とPPと搭乗回数の関係
上の表からこんなことがわかります。
- 旅割75(普通席)のPP単価が8.46円と最も安く、総コストを抑えられるが、SFC修行解脱に必要な搭乗回数はプレミアムクラスのほぼ倍と、最も多くなってしまうということ
- コストを度外視してプレミアム正規運賃で修行すれば、搭乗回数を最も少なくできること。
- プレミアム旅割28が、コストと搭乗回数のバランスが良いということ。
旅割75ならコストは最小だが……
2017年1月26日の「羽田-那覇」の旅割75は12,490円と非常に安く、もらえるPPは1,476。
12,490÷1,476=8.46
PP単価は8.46円まで下げられます。
SFC修行の全てをこのPP単価で済ませられれば、総コストは43万円を切り、明らかにプレミアムクラスより低コストで修行ができます。しかしデメリットもあります。
- 旅割75は時期や時間帯によって価格の変動があるため、必ずしも毎回12,490円で済むわけではない。常識的な時間帯を選択するとそれほど安くならない場合もある。
- 搭乗回数がプレミアムクラスの倍近く必要になり、シートも窮屈なため、費用は安く済むが、時間的負担、肉体的負担が大きい。
- 体調不良など急な予定変更があった場合、キャンセルに多額の手数料がかかる。
「羽田ー那覇」は1日11便ほどありますが、旅割75は時間帯によって価格が違い、最安値と最高値では5,000円ほどの開きがあります。最安値を狙おうとすると、極端に出発が遅く、宿泊が必要になって総コストを押し上げてしまったり、始発で空港に行かなくてはならない早朝フライトになってしまいます。
よっぽど飛行機に乗ることが大好きでないと、羽田-那覇を普通席で17往復するのは時間的負担、肉体的負担が大きいです。だからこそ修行と言えるわけですが、楽をしたいならプレミアムクラスを狙った方がいいでしょう。
また、前日になって体調を崩してしまったら、取り消し手数料は60%も取られてしまいます。取り消し手数料に関しては2015年10月25日以降から制度が変わったので、従来より少しマシになったんですが、それでも60%は痛いですよね。
旅割は購入してしまったら時間変更も日程変更も利きません。インフルエンザ一発で多額のキャンセル料金を背負うことになります。
SFC修行にプレミアムクラスを使うべき理由は費用と効率のバランス
搭乗回数に関しては、プレミアム正規運賃が15回と一番少なくて済みますが、PP単価は16円にもなってしまいます。総コストは実に80万円オーバー。ちょっと現実的な金額ではないですよね。
これに対して、18回の搭乗で済むプレミアム旅割28ならPP単価は約9円。総コスト46万円。普通席の旅割75には負けてしまいますが、SFC修行のPP単価は10円を切れば十分に優秀です。少し費用がかかっても、旅割75より、プレミアム旅割28で修行をした方が、短期間で修行を済ませることができ、シートが広々しているので搭乗時の肉体的負担も小さくて済みます。
もちろんプレミアム旅割28も、旅割75と同じく、時期や時間帯によって価格に変動があるため、毎回必ずPP単価9円というわけにはいきません。しかし、おおむね9~10円程度のPP単価と思っておいて大丈夫です。また、キャンセル料がかかることや、便の変更が利かないことに関しては普通席の旅割75と全くいっしょです。
株主優待の自由度は他とは全く違う
最小コストの旅割75や、費用と効率のバランスに優れるプレミアム旅割28に対して、プレミアム株主優待割引はPP単価10.55円。修行にかかるのは航空券代54万円+株主優待券代と、かなり総費用がかかります。しかし、株主優待割引にしかない、絶大なメリットもあります。
- 時間によって値段の違いがない
価格の変動に囚われず、自分の好きな時間帯に飛ぶことができるのでスケジュールを組みやすいです。 - 時間変更、日程変更、キャンセルが自由自在
時間変更も日程変更もいつでもできます。「お腹痛くなっちゃったから次の便にしよう」等も可能です。キャンセルに関しても取り消し手数料はかかりません。使わなかった株主優待券は次回の搭乗に問題なく使えます。 - 予約時期に制限がない
旅割と違い「何日前までに予約」という制限がなく、空席さえあればフライトの直前まで予約が可能です。天気予報とにらめっこして。晴天が期待できる日だけを狙い撃ちするということができます。 - 予約が圧倒的に取りやすい
プレミアム旅割28は開放される席に限りがあるため、ビジネスマンや修行僧の間で座席の争奪戦が起こります。特に土日は一瞬で売り切れることも珍しくありません。その点プレミアム株主優待は席数に余裕があるため、圧倒的に予約が取りやすいです。
つまりプレミアム株主優待は、とことん融通が利くということです。なぜこんなに融通が利くのかというと、プレミアム株主優待は早期予約割引と違い、あくまでも正規運賃に準じる扱いだからです。株主にだけ、正規運賃のサービスを割引価格で提供してるという形なんですね。
お金に少し余裕があるならば、プレミアム株主優待割引は修行にとって非常に強力な味方となります。
結局修行にはどの運賃で乗るのがベストなのか
最安値を求めて苦しい修行を積むのも、思い出になってそれはそれで楽しいかもしれません。また、時間的負担と肉体的負担が少ないプレミアムクラスで優雅な修行(?)をするのもいいでしょう。これはもう各人がどこに重きを置くかによって違ってきます。
総費用なのか、時間なのか、肉体的負担なのか。
私の場合は、連休が取りづらかったので、羽田-那覇線の日帰り単純往復に絞りました。また、余裕のある修行をしたかったので、ほとんどがプレミアムクラスでした。でも修行を終えた後、少し後悔もあったんです。「確かに余裕があったけど、もっと乗りたかったな……」と。
頭に思い描いていた修行と、実際にやる修行では、全然違うんです。こればっかりはやってみないとわかりません。
私がオススメするのはこんなやり方です。
- 旅割普通席で試しに1回「羽田-那覇」等の長距離路線を修行してみる。全然余裕だな、たくさん飛びたいなと思ったら、そのまま安い旅割75の予約をどんどん入れていく。
- それほど楽しいと思えなかったり、肉体的につらいなと思ったり、短期間で済ませたいと思ったら、プレミアムクラスに絞る。
- プレミアムクラスに照準を定めたら、すぐに株主優待券を入手して、直近で値段が上がってしまっている日付に、プレミアム株主優待割引の予約を入れる。そして2ヶ月先以降にはプレミアム旅割28の予約を入れていく。
株主優待券は修行に欠かせないとても便利なものではありますが、全てのフライトに使う必要は全くありません。プレミアム株主優待とプレミアム旅割28ではもらえるPPは同じなんですから、基本的には安いプレミアム旅割28を狙っていった方がいいです。*1
しかし、「来週、急に予定がなくなったから、飛びたいなー」と思ったときには、もうプレミアム旅割28は売っていませんから、株主優待を使う以外にありません。こういう、必要な時に必要な枚数だけ、株主優待券を入手するというのが、賢いやり方だと思います。
まとめ
ANA SFC修行では、コストと効率のバランスに優れたプレミアム旅割28を中心に組み立てるのが基本的にはおすすめです。
少しコストは嵩みますが、株主優待券を利用すれば、急に思い立って乗ることもできますし、「あんまり毎週乗ると疲れてしまうかな」と考えて余裕を持たせておいたスケジュールの間を埋めていくというようなこともできます。
修行は始めてみなければ、自分にとってどんなものかはわかりませんから、「この運賃で乗るのがベストに違いない」と先入観に囚われないようにしてください。
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*1:プレミアム株主優待とプレミアム旅割28の価格が逆転する時期もあります。その場合はより融通の利くプレミアム株主優待を積極的に使っていきましょう