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ANAがハワイ線にエアバスA380を導入!!

最終更新日:2016年10月19日

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2016年正月早々、超特大ニュースが入ってきました。まさかのA380!!

 

ANAホールディングスは欧州エアバス製の超大型機「A380」3機を国内勢で初めて導入する。発注規模は定価ベースで約1500億円。国内線は人口減で頭打ちとなっており、国際線の拡大に向け大型投資に踏み切る。2018年度にハワイ路線などに投入する見込み。 

 

A380は総2階建てで500席超の座席設定が可能な世界最大の旅客機。1度に大量の旅客を輸送できるため、競合機に比べ1座席当たりの運航コストが約15%低いとされる。 

 

ANA、超大型エアバスA380導入 3機1500億円 :日本経済新聞

 

 

スカイマーク破綻の原因となったA380

スカイマークが6機購入しようとして、結局は経営破綻の原因となってしまったエアバス社の超大型機A380。

 

2015年8月に行なわれた債権者集会で、最終的にANAがスカイマークを支援することに決定したわけですが、この裏ではスパイ映画さながらの諜報戦が行なわれたと言われています。

 

スカイマークの羽田発着枠が喉から手が出るほど欲しかったANAは、スカイマーク支援に名乗りをあげましたが、すんなりとはいきませんでした。競合したのは、デルタ航空をスポンサーに担ぎ出した米リース会社イントレピッド。ANAホールディングス対イントレピッドの一騎打ちとなりました。

 

勝負の行方を左右したのは、大口債権者であるエアバス、ロールスロイス、CIT。この3社を取り込めばANAの勝ちという状況で、ANAは大きな代償を支払ったと言われています。

 

エアバスからの支持を取り付けるため、スカイマークがキャンセルしたA380の代わりに、ANAが将来的な発注の約束をしたのではないかと。

 

現代の恐竜 A380は滅び行く運命にある

私はこの噂レベルの報道に関しては、もちろん気にはしていましたが、ブログで全然ふれなかったんですよね。ほとんど信じていなかったからです。

 

「いやいやいや、まさかA380なんていう大艦巨砲主義の時代遅れの超大型機をいまさら導入するわけないでしょう。ANAはなんのためにB787をローンチ導入したのよ。これからは燃費のいい中型機でニッチな新規路線を開拓していく方向なんじゃないの? A380なんて導入したらコストどれだけかかるのよ」と思ったのです。

 

事実、2015年はエアバス社のA380受注数は、全世界でゼロ(!)でしたからね。巨大で高価すぎて、もう誰も買ってくれない飛行機になっていたのです。

 

と、同時に「でもA380乗ってみたいなあ……。憧れだよなあ。滅び行く恐竜みたいなロマンがあるよなあ。ナウシカに出てくるトルメキア軍のアレみたいだし」とも思っていました。最後ちょっと余計ですが(笑)。

 

ハワイ線はANAに残されていた最大の弱点

ANAは14年に国際線の旅客輸送実績で日本航空を抜き、国内首位に立った。ただ首都圏発着のハワイ路線で提供する座席数シェアは約20%。約35%の日航に差をつけられている。日本からハワイへは年間約150万人が訪れ、航空各社の平均搭乗率は80~90%。ANAはハワイ路線の既存機材の2倍超の座席数を設定可能なA380の導入で1便当たりの旅客数を増やし、シェアを高める。 

 

首都圏発着のハワイ線座席数シェアで、ANAがJALに勝てないのは当たり前です。便数で2倍の差をつけられ、機材も天と地ほどの差をつけられていますから。

 

当ブログでは「ANAのハワイ線は機材(B767-300ER)がしょぼすぎる」と何度も何度も取り上げています。しかしA380が導入されれば、この記事たちも「そんな時代もあったなあ。懐かしいなあ。今は最高に快適だなあ。ANA最高!」となることは間違いありません。B787より、座席数が2倍ほどにもなるA380の方が、リゾート路線のハワイ向きであることも事実。

 

 

というより、ANAとしては ハワイ線以外にA380を投入すべき路線が見つからなかったという方が正しいかもしれません。現在B777-300ERを飛ばすドル箱の北米線は、既に後継機であるB777-9Xを発注済みです。今更A380に切り替えるわけにはいきません。

 

また、現在、時間帯を変えて2便態勢の路線をわざわざA380一便に集約してしまうと、顧客の利便性を損ねてしまいます。早い便、遅い便と選べた方がいいのは当たり前ですよね。ドル箱の北米線は一番気を遣わなくてはいけません。ここで顧客に失望されてしまったら、元も子もないです。

 

一方の欧州線は需要に不安があります。ただでさえ供給過多のドイツ便でA380の席を埋めるのは容易ではないでしょう。

 

旺盛な需要があり、ライバルを逆転することも可能なハワイ線に、消去法的に投入ということになったようです。

 

ANAは大丈夫だろうか

 

機材更新は大歓迎ですが、手放しで喜んでもいられません。たくあんマイル弁当さんと同じ危惧を私も抱いています。投資家たちも皆同じでしょう。

 

「これがANAの経営悪化の引き金になるのではないか……」と。

 

ANAの経営を揺るがす不安材料

経営悪化につながる要因は山ほど挙げられます。

 

まず、かつてJALがハワイ線で犯した失敗として、10便にものぼるB747-400による大量輸送で航空券価格が大きく値崩れしてしまったということがありますよね。ハワイ線はビジネス客がほとんどいないため、ただでさえ採算が取りづらいと言われています。かつてのJALの二の舞になるんじゃないかという危惧。

 

さらに、パイロットと整備士の養成を短期間で終わらせられるのかという危惧。2019年の導入までに、1機あたり10人、3機で30人以上のパイロットが必要になります。ご存知のとおり、旅客機の免許は機材毎に違うわけで、今から30人以上のパイロットにA380の免許を取らせるのはそう簡単なことではありません。今現在最も大騒ぎになっているのは、成田-ホノルルを飛ばしているエアージャパンの社員の方たちだと思って間違いないでしょう。

 

また、万が一の機材故障の際、代替機を用意しなくてはいけないわけですが、A380の代わりになるほどの座席数を持つ機材は他にありません。A380が1機故障してしまうと、別の機材で2機ないし3機の代替機を飛ばす必要が出てくるので、非常に厳しいオペレーションが予想されます。

 

たった3機の新機材投入は、逆にコスト増がハンパじゃないということです。本来であればスカイマークが目指したように、6機以上、できれば10機、20機といったオーダーでなければいけなかったはずなんですよね。

 

しかし増やせば増やすほど、今度はどの路線に投入すれば採算が取れるのかという難題が待っています。本来であればこんな大型機ではなく、787のような中型機で、旅客数は少なくとも確実に座席を埋められる新規路線を開拓していった方が絶対にいいのです。

 

各航空会社のA380座席数

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私たちユーザーがANAの経営を心配してもしょうがないですから(笑)、単なるハワイ好きでANA好きの、いちマイラーとして、ANAハワイ線A380の座席数の予想をしてみようと思います。その前に、現在A380を保有している各航空会社の座席設定を見てみましょう。

 

 

最少が大韓航空の407席。最多がトランスアエロ航空の652席となっています(2016年中に投入予定)。大韓航空や、シンガポール航空の新仕様機は1Fがファーストクラスとエコノミー。2Fは全席ビジネスクラスというとても贅沢な座席設定になっています。

 

スカイマークが導入予定だった機体は大韓航空をさらに上回る贅沢仕様で、ビジネスクラス114席、プレミアムエコノミー280席の2クラス計394席となる予定でした。全席プレミアムエコノミーはすごいですよね。贅沢すぎます。

 

スカイマーク用に製造が開始されていたA380を、そのままANAが利用することはあり得ません。当然座席設定を変えてきます。問題は、それがどうなるかですよね。

 

ANAハワイ線A380の座席設定はどうなるか?

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夢のA380ファーストクラスでハワイ旅行! 考えただけでワクワクしてきますが、そうは問屋が卸しませんよね。

 

現実的な話をすると、ハワイ線のような中距離路線でファーストクラスの設定はないと見て間違いないでしょう。普通に考えてビジネスクラスとエコノミーの2クラス、もしくはプレミアムエコノミーを加えた3クラスになると思われます。2016年1月から、JALが羽田-ホノルル線にプレエコを投入したため、それに対抗する可能性は高そうです。

 

また、極端にエコノミー席を増やすこともないと思います。エコノミーはせいぜい350~380と少なめ。プレエコが40~50。ビジネスが60~80くらい。総席数は450~510くらいじゃないかと。この範囲内で、どちらかといえば少なめの設定にしてくると予想しています。

 

多すぎない席数でゆとりあるシートのエコノミークラス。ビジネスクラス相当の空港サービスがあるプレミアムエコノミー。フルフラットシートでくつろげるビジネスクラス。この3つが揃えば、旅行会社もこぞって宣伝してくれるでしょう。「ANAのA380で行くハワイ6日間」。目に浮かびますよね。

 

空港はどうなるか?

ANAが乗り入れる成田空港第一ターミナルはA380対応のスポットが4つ整っており、当初は成田-ホノルル線での運航ということになると思われます。

 

羽田空港は唯一107番スポットだけA380対応になっていますが、今現在は成田が使えなかったときの緊急時用であり、定期便は就航していません。特に日中の混雑時は乗り入れを許可しない方針を国交省が打ち出しています。

 

しかし、外資系航空会社も羽田へのA380乗り入れを熱望しており、難色を示している国交省も、2020年東京オリンピックに向けて整備に動く可能性はありそうです。羽田-ホノルルは深夜便ですし、A380の羽田乗り入れ第一号になるかもしれませんね。

 

まとめ

羽田発着枠を確保するため、スカイマークの尻ぬぐいを決意したANA。

 

機体も、席数も、コストも、何から何まで巨大すぎるA380の導入は、ANAの経営を悪化させかねません。

 

しかし同時に、マイラーにとっては、A380で行くハワイ旅行の魅力は代えがたいものがあります。「あのときA380を導入してよかった」と言える日が来るように、ANAには頑張ってもらいたいものです。

 

追記

2016年1月12日、エアバス社が「昨年12月16日にA380を3機受注した」と正式に発表しました。ただし、「公表を望まない匿名の1社からの受注」という内容です。これは間違いなくANAですね。エアバスがA380を正式受注するのは実に約2年ぶりとなります。

 

ANAも2016年1月29日に発表の中期経営計画で、正式にA380導入を発表するはずです。注目すべきは投入路線と座席仕様。楽しみです。

 

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