2015年夏に、「羽田空港と秋葉原を結ぶ運河クルーズが始まる?」というニュースがありました。
「羽田空港から都心部への船による移動の可能性を検証するため、国土交通省が行なう社会実験」とのことだったので、鉄道、バス等の既存交通手段の代替として本気で考えているのかな? と勘違いしたのですが、実態は2020年の東京オリンピックを睨んだ新たな観光需要の開拓という感じのものでした。現在は運航されていません。
そして2015年12月、また新たな水上交通が誕生しました。その名も『TOKYO WATER TAXI』。略してTWT(?)。
先の運河クルーズは大人数の乗合船でしたが、TOKYO WATER TAXIは1~6名乗りの小型船。しかも乗船時間・下船時間、乗船場所・下船場所も全て自分で決める、正にタクシーのような運用です。まだ停船場の数は限られていますが、今後増やしていくとのこと。
ちょっと面白そうだったので、早速浅草から羽田空港まで乗ってきました! 今回はTOKYO WATER TAXIの乗船レポートです。
TOKYO WATER TAXIとは
「好きなときに 好きなところへ」
「東京の新しい公共交通として」「東京をめぐる観光の足として」「生活者の日常の足として」「暮らしを守る防災機能として」
2015年11月にプレオープンし、12月9日に初めてお客さんを乗せて運航したばかりの、できたてホヤホヤの水上タクシーです。
旅行の際、これに乗って羽田空港まで行ったら、きっと楽しいと思うんですが、少し心配な点もあります。「旅行の足として使えるか?」を念頭にレポートしてみたいと思います。
吾妻橋から乗ってみた
浅草駅から吾妻橋を渡ってすぐ左に、船着場があります。停船場はいろんなところから選べるんですが、今回はここから乗ることにしました。単純に自宅から一番アクセスが楽だったからです。写真の対岸が浅草。赤い橋が吾妻橋です。
予約するときに「吾妻橋から羽田空港までどれくらい時間がかかりますか?」と質問し「約1時間半」との回答をもらっていました。希望すればさらに時間を延ばして、寄り道しながらゆっくり行くといったアレンジも自由にできます。
吾妻橋から望遠で船着場を撮ったもの。黄色く見えている小さな船が、今回乗船するTOKYO WATER TAXIです。おもちゃみたいな船でかわいいですねー。
乗船予定時間の10分前に着いたんですが、既に船長さんが待っていてくれました。外観もそうでしたが、乗ってみるとさらにコンパクトな船だなという印象です。運転席の右斜め後ろに1名が座れる席があり、そのすぐ後ろに2名座れるベンチ。そして船体左側(運転席のすぐ後ろ)に横を向いて3名座れるベンチがあります。汚い図ですいませんがこんな感じです。
船長さんと、アシスタント(?)の船員さんと2名が乗り込み、いざ出発です。途中、船長さんがいろいろと説明をしてくれました。
前職は釣り船の船長さんとかかな? と思って質問したんですが、船長さんは工事関係の船などを動かしていた大ベテランでした。笑顔と優しい語り口でずっと楽しませてくれました。
清洲橋を過ぎたあたり、東京スカイツリーがいちばんよく見えるスポットで一度船を停めてくれて、後部デッキに出て写真撮影タイム。航行中は危ないので、基本は席に着いていますが、たまにこうして船を停めてくれて後部デッキに出ることができます。
ちなみにここでデジタル一眼レフの電池が切れたため(笑)、以降の写真はiPhoneで撮ったものしかありません。
船内は至れり尽くせり
先ほどの図にもちょっと描き込みましたが、小さい船体とはいえ、船内にはちゃんと洋式の水洗トイレがあるので、女性でも安心です。また、ちゃんとした船室になっているので、寒い時期でも太陽が出ていれば中はとても暖かいです。エアコンも付いているので、夏場の暑い時期でも大丈夫そう。
ただ、荷物を置くスペースはベンチ下の収納部分だけなので、大きな旅行用トランクなどを持ち込む場合は3名が限界かなという感じでした。普通の手荷物程度だったら6名フルに乗れそうではあります。何人乗っても料金は一緒なので、できれば大人数で乗りたいところですね。
3人が横向きに座れる大きなベンチの窓からは、こんな景色が見られます。結構波しぶきがかかるので、窓はすぐに水滴で見づらくなってしまいますけどね。
海王丸が停泊していた!
晴海客船ターミナルのあたりには、日本が誇る大型帆船『海王丸』が停泊していました。めちゃめちゃかっこいいですね……。ほれぼれします。世界中を航海する練習船なので、ここで見られたのはラッキー。ちなみにもうひとつの大型練習船『日本丸』の方は2015年12月現在、ハワイに向けて、太平洋を絶賛航海中です。
船長さんが「帆船ってご覧になったことありますか? ちょうど今、海王丸が豊洲の新市場の近くに停泊してますよ。見に行ってみますか?」と聞いてくれたんです。なんというホスピタリティ。感激しました。2016年1月7日14時には出航してしまうみたいです。
レインボーブリッジを海から見る
レインボーブリッジを真下から見ることってあんまりないですよねー。美しい。
レインボーブリッジのそばには首都高速がぐるりとループする場所があるんですよね。高速ジャンクション好きにはたまりません。
この船は普段から汽水域を航行するので、しぶきの塩が窓にこびりついていて、外が見にくいんですが、ここから先、東京モノレール沿いの京浜運河をくだっていくと波やうねりがなくなり、穏やかになるので、船長さんがループの下で船を停めて、窓を全部拭いてキレイにしてくれました。「普段はここまでサービスしません(笑)」とおっしゃってましたが。
天王洲のセレブも振り向く東京ウォータータクシー
少しだけ横道に逸れて、T.Y.HARBOR ブルワリーレストランの前を通りました。TOKYO WATER TAXIの停船所にはなっていませんが、ここの船着場までクルーザーで行き、そこから店内に入っていくのがセレブの遊びとして人気らしいです。かっこいいですねー。ちなみに着岸料がものすごく高価なので、TOKYO WATER TAXIの停船所になる可能性は低いようです。
あとこのすぐ近くにワールドシティタワーズ アクアタワーというガラス張りの高級賃貸マンションがありまして、運河から見上げると、まるで外国に来たかのようです。窓辺にイームズとか、固くて座りにくそうだけどかっこいい椅子をみんな置いてるんですよね(笑)。
しかしこの辺のセレブたちも、みんながみんな、東京ウォータータクシーを興味津々で見ていました。なんだあのおもちゃみたいな船は? といった感じで。
大井競馬場をすぎると牧歌的な風景に
東京モノレールに沿うように、運河をくだります。天王洲のあたりだけ異常にセレブですけど、そこを過ぎると急に下町情緒のようなものを感じる風景となります。
空港の手前、昭和島あたりには難所があります。だだっ広いんですが、真ん中を突っ切ろうとすると浅すぎて座礁してしまうんだそうです。ここは慎重に川縁に沿って進みます。そこから海老取川という細い細い川を通り抜け、弁天橋をくぐると多摩川と合流。
海老取川と多摩川の合流地点には大きな鳥居。これは環八通りですね。ここから船着場までは、すぐです。
羽田空港国際線ターミナルの見慣れた駐車場が見えてきます。川からだとまた違った雰囲気ですね。
羽田空港船着場に到着
ここまで、かなりゆっくり撮影タイムなどもとってもらって、 1時間20分くらい。吾妻橋からだと確実に1時間半以内にたどり着けます。
車で首都高使って渋滞なしなら30分くらい。電車だと50分くらい。時間で考えてしまうと水上タクシーに勝ち目はありませんが、普段とは全く違う東京を見ながらの1時間半は長さを感じませんでした。
船着場から羽田空港国際線ターミナルまでが遠い
船着場から羽田空港国際線ターミナルまでは、歩いていけない距離ではありませんが、大きな旅行用トランクを転がしての15分は結構つらそうです。ちなみに国内線ターミナルまでは非常に遠いので、そちらに行く場合は、国際線ターミナルから無料の循環バスに乗ることになります。
環八に沿って駐車場側から回り込むように行くとこんな感じ。道路の整備が行き届いておらず、決して歩いていて気分のいい道ではありません。人通りもほぼゼロですしね。駐車場側に行かず、左から回り込んでも時間はだいたい同じくらいかかります。
国際線ターミナルチェックインカウンターまでは、歩いてたっぷり20分かかりました。現実問題、海外旅行前の景気づけとして水上タクシーで羽田空港まで行くのは、ちょっとまだ無理があるかなという感じですね。
- 昼~夕方に出発するフライトに乗るときしか使えない。
- 大人数だと荷物が載りきらなくなり、少人数だと値段が高くつく。
- 船着場からターミナルまでの距離が結構あり、送迎バス等がない。
- WEBサイトの使い勝手が悪く、予約の方法もアナログそのもの。支払いも銀行振込のみ。
3と4に関してはこれから改善されていくでしょうが、1と2がネックですね。しかし、価格に見合った楽しさは確実にあるので、停船場近くのホテルに前泊してからTOKYO WATER TAXIに乗って羽田に行き、アジア線に乗るというような楽しみ方はアリだと思いました。
「ここが神田川」「ここは目黒川」と、普段よく見知っている川の合流部を教えていただいたり、可動橋を見られたり、伊豆大島から帰ってきたジェット船(ボーイング社が開発して、後に川崎重工が製造)とすれ違ったりと、思っていた以上に面白かったです。
TOKYO WATER TAXIの利用について
停船場マップ(2015年12月現在)
- 天空橋
- 青海(パレットタウン)
- 有明客船ターミナル(ビックサイト)
- 桜橋防災船着場
- 吾妻橋
- 日本橋船着場
- 明石町防災船着場
- 黒船橋
- 両国防災船着場
- おしなり公園
- 羽田空港
- 越中島
- 朝潮運河船着場
料金
- 基本料金2,000円+最初の30分が3,000円。以降30分毎に3,000円加算。
- 最大6名まで一律料金。(1名で乗っても6名で乗っても料金は同じ)
予約
- 予約フォームから、利用したい日付を選択(現状では7日前までの予約が必要。停船場によってはさらに前に予約しないといけない場所もあり)
- 利用可能な停船場から乗船場所を選択
- 乗船したい時刻を選択
- 下船する停船場を選択
- 下船したい時刻を選択
- 予約者情報を記入してフォーム送信
- 担当者から予約可否の連絡メールがくる
まとめ
TOKYO WATER TAXI(東京ウォータータクシー)に乗って羽田空港まで行き、そこから旅行に出かけるというプランを検証しましたが、まだ出来たてほやほやで、これからの発展に期待! といった感じでした。
しかし旅行は別として、友達数人で楽しむ東京運河クルーズとしては最高に楽しいと思います。6人で乗れば思いのほか安いですしね。